学びの環境マネジメントとは?世界一幸せな国デンマークの人づくり

学びの環境のベンチマークを探すリサーチプロジェクト         ~海外教育現場視察~※視察報告動画あり

2019.6.1-6.9
学びの先進事例調査
Episode.2

表面化していた課題

『人材依存に陥る教育現場』

学びの環境開発や、学習する組織づくりを行なう中で、多くの教育現場が抱える課題が教育の質や内容が人材依存になっていることだと発見しました。個人の持っている情熱や経験、教育のキオクも重要である一方で、個人の努力だけではなく、visionからのbackcast的に進む組織の力で一定のクオリティーを保ち、ヒューマンエラーを解決することはできるのか…その解決をしている先進事例を探し求めました。

 


本当に解決すべき課題

『教育現場へのマネジメントの導入』
先進事例研究を行なう中で、人材育成に力を入れる北欧の教育にたどり着きました。その中でも、幸せな国ランキングの上位常連国であるデンマークでは、公平な社会を掲げ、公教育において「どこでも一定のクオリティーの教育を受けることができる」ことを重視していると知りました。その重要な要素として教育にマネジメントを導入しているというのです。教育におけるマネジメントとは何か、どのようにして一定水準の教育を提供しているのか。マネジメントの持つ力が人依存からの脱却のためのヒントになると考えました。


解決へのアプローチ(メソッド)

『教育現場視察(デンマーク)』

デンマークの教育を学ぶため、書籍や研究論文はもちろん、過去にデンマークのフォルケホイスコーレン(国民高等学校)に1年間留学していたLiCメンバーの植竹のネットワークを活かし、デンマークの教育現場で働く先生や生活する人との事前勉強会を開き、うわべだけではない生の情報収集を事前に行ったのち、その空気感や生徒の様子、現場の先生たちの様子を知るために現地への視察を計画・実施しました。

人材、空間、しくみがそれぞれどのようにデザイン・マネジメントされているのかをリサーチすることを目的に、教育施設を中心に7日間の滞在で13箇所の視察先を選定。教育現場として、そして人の働く場としての2つの軸で教育そのものの考え方と働き方の調査を行ないました。

私たちLiCはインターネットで調べる情報だけではなく、実際にその場での生活する人々を巻き込み情報を集め、視察でも良い面悪い面を含め、できるだけ実際の生活者と同じ目線を感じ、参加者それぞれが何を感じ考えるかを大切にしております。

例えば、今回はエグモントホイスコーレン(Egmont Højskolen/国民高等学校)の寮の生徒たちと同じ生活を行うため、学校で寝食を共にし、全体の朝の会などにも出席したり、観光バスを借りるのではなく、公共交通機関や地元の人に送り迎えをお願いするなどしたりしました。

<視察先13カ所概要>

【森の幼稚園を含む乳幼児教育施設(7箇所)】
Hou BørnehusSkovbakkeskolen・Hou Børnehus・Børnehuset Sommerfuglen・Lucinahaven Toulov Childcare・森の幼稚園(odder)・都市型保育園(Aurhus)

【公立小中学校(1箇所)】
Skovbakkeskolen

【エフタスコーレン(1年限定の全寮制中学校・1箇所)】
HMI Efterskolen

【フォルケホイスコーレン(国民高等学校・1箇所)】
Egmont Højskolen

【公立図書館(2箇所)】
Dokk1・Aurhus Bibliotek

【建築設計事務所(1箇所)】
CEBRA

 

『dialogue(対話)型リサーチ』

各教育現場の責任者をはじめ、そこで働く教職員、利用者に対話を通したリサーチを実施しました。monologue(一方的)な説明を受けるのではなく、大切だと考えることや違い、共通点を共有しながら、dialogue(対話)を通した学び合いと価値の交換を行ないます。

<対話を行った人々>

・Egmont Højskolen Søren校長 ~デンマークの成人教育について~

・HMI Efterskolen 創立者 ~青年期の選択肢と学校設立について~

・日本人保育士 Yuko MInoda氏 ~デンマークと日本の乳幼児教育の違いについて~

・設計事務所CEBRA  Principal Architect矢崎氏 ~デンマークで働く良さと大変さ~

 

『街に生きる人々を観察するフィールドリサーチ』

それぞれの地域の教育現場にて育まれた人々が、何を大切に、どのように・何を感じて生活しているか、生活者のひとりになったつもりで街を歩き、街のつくられ方や生活者の暮らし方を通じて感じる時間を大切にしています。

<訪問都市>

・Copenhagen

・Hou

・Odder

・Aurhus


アウトプット

視察先でのインタビューをまとめた『Research Movie of the Danish Philosophy』

現地の人々のインタビューを行い、デンマーク社会と教育で脈々と受け継がれ、自然と彼らの中に浸透している考え方と、実際に視察に一緒に行った参加者の現地で感じたことをまとめました。

このResearch Movieは単に視察の記録としての役割だけでなく、見た人々の考えるきっかけにしてもらうことを目指しております。

制作過程では、視察後に再度参加者を集めたワークショップを行い、それぞれが改めて視察で何を感じ、どのような事を伝えたいかを話し合いました。


 

 


アウトカム

『Vision によるマネジメント』と『ヒューマンセントリックな環境デザイン』

視察を通じて、教育現場へのマネジメントの導入には、『Vision』そして『ヒューマンセントリック』の2つのキーワードが重要であることがわかりました。

人依存にならない組織的な教育の実行のためにという視点で実施した今回のデンマークでのリサーチプロジェクトでしたが、見えてきたのは社会全体で共有しているVisionや教育現場のMissionの大切さです。何を目指し、そのために何を行なうのかの土台となる考え方を共有していることで、施設長や現場の先生の「教育観」頼りではない、組織的で計画的な教育(人材育成)を実行できていることがわかりました。

また、ルールやマニュアルで人を縛り、管理するのではなく、ヒューマンセントリック(人中心)の考え方が見えてきました。それは人材育成やしくみ、空間のすべての根底にある考え方であることがわかりました。

この成果は教育のマネジメントにおけるベンチマークのひとつとして、今後のプロジェクトにて活用してまいります。

学びの先進事例調査

自分たちが目指す社会の
先進事例をリサーチし、
未来へとアーカイブする

工業社会から知識社会の転換期、複合的な課題先進国と言われる日本社会。世界には様々な課題を乗り越えた社会があります。それらの国々や団体の、課題の背景にある文脈とそれぞれの選択と視点に立ち、ベンチマークとして自らの目でリサーチし、そこで得た知識や解釈を自らアーカイブし、コミュニティーに活かしていきます。